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| 第二回 「言葉の魔術」(悠里) |
綺麗な砂浜に君がいた
なんだか解らなかったが
君はとても素敵な笑顔で
僕を見つめていた
僕は見つめる
心から「欲しい」という気持ちで…
君が手を差し伸べる度に
波が足の下を走っていく
走り、去り…
その瞬間の度に僕の心が
不安でいっぱいになる
そう…
気付けばあれから30年が経っていたんだ…
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冬の冷たい風が肌に刺さるように吹いていき、人が踏む枯葉が乾いた音を立てている。
公園のベンチに寝そべっている彼は落ちかけたジャケットをまた身体にかけ、深く息をした。
白髪が生え、痩せ細った身体を横たえている自分の脳裏に
今もなお、あの光景が浮かんでは消える。
「一緒にいたいんだよ…今でも」
破けたジャケット、ボロボロのシャツ…窪んだ目に、どす黒く染まった肌。
距離を置いて通り過ぎる人々。
パサッ
「あれ〜?何か落ちたよ。おじちゃん」
純粋な目で女の子が一冊のノートを拾い、それを彼に渡そうとする。しかし、彼は途端に形相を変え、女の子の胸ぐらを掴んだ。
「さわるんじゃねぇ!!」
ぶるぶる震えていた女の子は大声で泣いて駆け出していった。
「このノートには彼女の言葉が詰まっているんだ…」
誰にもさわらせねぇ…
ボロボロになっているグリーンのノートを彼は愛おしそうに抱き締める。
ねぇ。
人間って不思議よね。
平等ってないのに、なんで不公平っていうのかしら。
希望って何なのかしらね。
その言葉自体いらないと思うんだけど。
言葉で人間を縛っているんじゃないかしら。
言葉は縛るものじゃない。
表現することから始まった言葉を
そういう風に使ってはいけない。
言葉は魔術。
もっと素晴らしい使い方はできないのかしらね…
この海のように!!
彼女の言っていた「言葉の魔術」という言葉が好きだった。
「言葉の魔術…人間のシステム」
その意味はなに?
随分昔に聞いていたが、彼女は軽く微笑んでこう言っていた。
「一生解らないものだと思うわ」
その時渡されたこのノートが…
きっとその答えを出しているのだと思う。
「君のそばにいたかった…」
窪んだ目から涙がこぼれる。
唇を噛み締め、ノートをより一層抱き締める。
もう会えないんだという思いからこぼれる涙は彼女が嫌いだと言っていたものを意味していた…
しかし…
彼は気付いていない。
その心に… |
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